An Account of My Hut

個人的な備忘録。たぶん誰にも見つかることはないでしょう。

FC-76D撮影対象(換算600mm前後)

おさらい

まずはナナロクのスペックの再確認と簡単なコメントから。 高橋製作所FC-76DCはfl=570mm,F=7.5という補正レンズなしでは眼視寄りのスペックです。これでも撮影は可能ですが、周辺ではかなり放射状に流れています。76Dレデューサーをつけることでfl=417mm,F=5.5というデジタルであれば実用上十分な明るさと主要な星雲を撮影するのに適したスペックとなり、イメージサークルはΦ36mmとフルサイズまで使用可能です。個人的な感想としては、周辺でストンと落ちる減光の補正が面倒なのに加え、フルサイズ最周辺では多少の星像の崩れと色ズレが認められますので、ナナロクの手軽さを最大限活かすという意味でもAPS-Cでの使用に留めるのがベターだと考えています。勿論フルサイズでもうるさいことを言わなければ実用上問題ありません。

撮影対象まとめ

今回は自分の撮影環境(レデューサー+APS-C)での主要な(自分の主観で見栄えがする)撮影対象をまとめておきたいと思います。

  • 春:マルカリアンチェーン、銀河は厳しい(クロップしても解像度が足りなく感じます)

  • 夏:M8M20、射手座スタークラウド(溢れ気味)、M16(小さめ)、M17(小さめ)、ペリカン星雲(IC5070)、北アメリカ星雲(NGC7000、溢れ気味)、網状星雲(東西それぞれ)

  • 秋:アンドロメダ星雲(溢れ気味)、ハート星雲、ソウル星雲、M33

  • 冬:オリオン大星雲、馬頭燃える木、魔女の横顔、バラ星雲、すばる、勾玉星雲、カリフォルニア星雲(溢れ気味)

マルチフラットナーにフルサイズの組み合わせでも大体同じ写野ですので参考にしてみて下さい。フラットナーで撮影するとFが少し暗めなのでレデューサー使用の場合よりも多めに露出をかける必要があります。自分がまだ撮ってない対象も含まれていますのであしからず。走り書きなので忘れてる対象があったら適宜追加します。

ということで

一月に一度撮影するして、単純計算で1年以上楽しめます。初めての望遠鏡で悩んでる方、ナナロクはいかがですか?焦点距離が似た筒をお持ちの方も是非参考にしてみて下さい。そして他にもこんな対象があるよ、というのがありましたら是非教えてください。

初、電視観望

電視観望はじめました。 これまでオートガイドもせず天文用CMOSも所有していなかったので、興味があったものの手を出せずにいました。先日ひょんなことから天文用CMOSを使えることになり、表題の通り電視観望を試してみた次第です。 とはいいつつ最近は晴れ間がないので、天文用CMOSを全く触ったことがない人がどこに苦労したかを残しておこうと思います。

使うのは

ZWO社やQHY社、SvBony社のCMOSを利用する方がほとんどだと思います。今回自分はPlayeOne社(以下、PO社)のNeputune-C Ⅱを使いました。PO社のCMOSカメラは最近サイトロンさんで取り扱い開始した製品で、ネット上での情報は少なめだと思います(ネットの海は広大ですから、もう少し探せば他にもいらっしゃると思います)。

PO社のCMOSカメラの製品名は惑星の名前になっているのですが、これが用途をわかりにくくしていると思っています。もちろん対象に合わせたセンサー選びもあり得るとは思いますが、自分の光学系に合わせて適宜バローレンズやアイピースを併用して拡大率や合成F値を調整するのが普通だと思っていたのであまり意味がないものではと思います。情報を集めるにあたっても製品名からセンサー情報が読み取れないのは少し不便に感じます。通常のカメラではどこ製の何というセンサーかと言うのは天体用CMOSほど気にしたりしていないので、この件に関しては気にしすぎなのかもしれません。

「Neptune-C IIは、既存のIMX462より大きなチップ面積、高い解像度を備えたソニーの最新イメージセンサーである1/1.8型のIMX464を採用したプラネタリーカメラ」との説明通り最新のイメージセンサーを採用した惑星撮影用CMOSカメラです。赤外にも十分な感度があるのでメタンバンドでの撮影や最近流行りの赤外撮影も可能かと思います。 CMOSカメラについてこれまで所有したことがなく詳しい知識を持っていないので、スペックや他製品との比較は勉強してから書くことにします。

日中に前準備

商品説明にプラネタリーカメラとありますが、早速関係ない電視観望に使います。この時期は晴れないので、まずは日中に各種ドライバーやソフトウェアのダウンロードと使い方を学びます。ドライバ周りやソフト設定で苦労するかと思いきや、購入時に付属する2冊の冊子のとおりに手順を踏むだけで滞りなく進みました。これらは初心者にとってのバイブルだと思います。あらかじめドライバをダウンロードし、SharpCapをダウンロードしてカメラを接続します。そして付属のケーブルを繋ぐことで問題なく認識されました。付属のケーブルは平たいケーブルで程よく撓るので取り回しは良好に感じました。ガイドスコープはピント合わせ部分のネジのピッチが小さかったため、かなり回す必要があり面倒でした。日中手元が見える時に遠くの対象であらかたピントを合わせておかないと夜に手こずりそうです。映像を確認して露光時間やライブスタックのやり方を一通り確認して、日中の準備は終了です。

夜に電視観望

今回はベランダで電視観望を行いました。北極星はみえませんので、ポタ赤を適当に北に向けるだけの簡単セッティングです。SvBONYのガイドスコープを利用しました。ちらっと見るだけなら追尾がなくてもなんとかなりますが、ライブスタックをするなら追尾が必要ですが、今回の焦点距離では追尾精度はほとんど必要なさそうです。センサーサイズが小さいので導入に苦労するかと思っていましたが、リアルタイム性もそこそこ高く、今回は月や惑星という明るい天体でしたのでそこまで苦戦しませんでした。ただ淡い対象を狙う場合はちょっと苦戦しそうな予感です。自分はいつも望遠鏡で手動導入なので多少慣れているのですが、そうでない場合は自動導入機推奨かと思います。

その日は月が太っていたのでまずはお月見を。カメラとPCを接続して蓋を開ける前に感度に注意したほうが良さそうです。電視観望ガイドブックには「ゲインをできる限りあげる」ことが推奨されていたのでそのように設定して始めたところ、月が全力でサチってました。多少のサチりでCMOSが壊れることはそうそうないと思いますが、強い光を入れすぎることは良くないので少しヒヤッとしました(入射するフォトンの量は変わらないからゲインを上げても素子が焼ききれることはないのでしょうか?勉強の必要ありです)。ここらへんの設定の詰め方はもう少し勉強したらまた記事にしたいと思います。

実際に月をみてみるとかなりボヤボヤしてる像でした。スコープの問題かカメラの問題か電視観望はこんなもんなのか?と色々と考えつつ、木星土星を見てみます。かなりボケっとして星の周りがピンぼけしてハロが出ているようになっているな、と思っていたところで雲が出てきて終了。 撤収しながらUV-IRカットフィルターをつけ忘れてることに気づきます。そのせいで(おそらく)赤外ピンボケの像になってしまったということでしょうね。これまでカラーカメラしか使ったことがなかったので、紫外赤外領域の感度がこんなにあるのかということを実感しました。赤外での利用も見込めてワクワクします。ガイドカメラの設計の可能性もあるので後日晴れたらフィルター有無の比較をちゃんとしたいと思います。

つまり

以上まとめて

  • 日中にドライバやソフトウェアは各種ダウンロードしておく
  • 日中に無限遠にピントを合わせておく
  • 月を見る場合はゲインに注意する
  • UV-IRカットフィルタはちゃんとつける(要検証)

これらを気をつけて付属冊子に従うだけで誰でも簡単に電視観望ができそうです。今回はミューロンを外気順応させるだけの時間がなかったので諦めましたが、次回はこのCMOSの名前通り惑星を撮ろうと思っています。

晴れを祈って。

星見でのやらかし案件

今回のやらかし

星見に行った際のやらかしについてです。これまで色々とやらかし案件はありましたが、先日の星見では色々とやらかしたので反省も込めて記しておこうと思います。

今回のあらまし

先日、この時期には珍しく晴れ間がありましたので星見に行きました。その日は遅い時間の出発で準備にかける時間がほとんどなく、急ぎで現地に向かいました。高速道路降りてからの道中にコンビニがあるだろうと高をくくっていたらありませんでした。この時点で夜食の確保失敗しています。1つ目のやらかし案件です。 今の時期は夜が短いから大丈夫と自分に言い聞かせ、現地に着いて快晴に喜び、せせくさと機材の準備を始めます。三脚を立てて、赤道儀をのっけて、よし鏡筒を乗っけるぞ、となった段階で気づきます。

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鏡筒バンドがない。。。

自分の目を疑いましたが、鏡筒バンドがついていないのです。 いやいやいやご冗談を、と思い一度鏡筒をしまってもう一度取り出してみてもないのです。鏡筒バンドが。。。 星見に行くたびに何かしらのパーツを忘れることは多々あるのですが、鏡筒バンドがなくなるのは初めての経験でした。以前鏡筒自体を忘れるやらかしもしているのでやらかし度は同レベルでしたが、目の前にブツがあるのに撮影できないという状況はなかなか精神的にくるものがありました(帰ってから家を探しましたが見つからず焦りましたが、色々思い出して見つかったのはまた別の話)。2つ目のやらかし案件です。

一応持ってきていた予備の機材を出して撮影もしましたがこちらはカメラの電池が一時間程でなくなりました。マウントを統一していないことによる片方の機種の充電忘れを以前から恐れていましたが、このタイミングで問題になるとは。。。3つ目のやらかし案件です。

とにかく今回は絶妙に機材が使えない状況でした。カメラの電池もポータブル電源もあるのに充電器を忘れている、いつもなら使わない筒を持ってくるのに今回は持ってきていない、撮影しながら眼視をするための三脚を忘れている、等々。。。急いで準備したので今回はまぁいいかという妥協が重なった結果、懸念していた問題点がまとめて浮上してきたということですね。急いでいる際に持っていくものは事前に決めておく、機材に冗長性を持たせておくことを努努忘れるなということで。

ということで

ということで急遽知人からお借りしている双眼鏡での眼視のみ楽しむことにしました。自分の天文歴は浅く、星見に出た際に機材は撮影に回してしまうことがほとんどでしたので、ある程度暗い空で眼視をした経験は実はあまりありません。天の川中心方向を流し見したり、星図と照らし合わせながら星雲星団を追ったり、じっくりと観察したりという行為は新鮮で非常に楽しいものでした(普段でしたら追尾状況やピントの確認と色々と忙しいですから、何も気にせず星見できるのは珍しいのです)。同じ天体でも空の状態が違うだけで違った顔を見せてくれるのも楽しみの一つですね。来年こそはメシエマラソンをやろうと意気込んで場所や見え方を確認しつつこれで一晩楽しめるな、なんて思っていたらあるタイミングで双眼鏡の見え味が悪くなります。対物レンズを確認すると見事に結露していました。逆に思いっきり結露していてもぼんやりとM8は見えていたことに驚きました。望遠鏡の結露対策というとフードを付けたりレンズヒーターを巻いたりとありますが、双眼鏡の結露対策ってあまり聞かない気がします。双眼鏡にヒーターつけるとなると二ついりますしモバイルバッテリーまで持つと重いですよね。ということで双眼鏡も結露してしまうので星見は終了。一応4つ目のやらかし案件扱い。

いつもなら一息ついて夜食を食べたり温かい飲み物を飲むのですが、今回は夜食の確保に失敗していることを思い出し再びダメージを食らいます。下はジーパン、上はヒートテックにウルトラライトダウンという(天文的には)軽装備で来ていたのですが、その日は気温は6℃で微風。冬の装備で来るべきでした。5つ目のやらかし案件です。

まとめ

夜食確保失敗、機材パーツ忘れ、充電忘れ、結露、服装。 今回の星見は兎にも角にも自分の準備不足のなせる業でした。また一つ強くなれたということで。

今後の機材の展望

前書き

欲しい機材は星の数ほどありますが、自分の財力では到底手に入れられないものばかりです。現実的な範囲で今後の機材の展望をまとめておこうと思います。ノリと勢いで必要なものも必要でないものも増やしてしまうので、自戒を込めつつ道しるべとなることを祈って。

既存の機材の活用&発展

ナナロクのレデューサーを購入してから日が浅く撮りたいものが沢山あるので、これを撮りきること。撮影対象については別途まとめた記事を執筆しようと考えています。ナナロクに関しては強い赤道儀での運用でシステムが完成しています。換算で600mmを超えるのでオートガイドをするとベターではあるが、現時点では2分程度の露出でも歩留まり8割越えと悪くないのでオートガイドに関しては保留中。 BORG55FLを運用しようと強めのポタ赤を手に入れたのですが、APS-Cしか持っていない&極望ない&微動ない、という3重苦から運用がほぼ無理な状況。極望と微動を購入してシステムを完成させるか小型の赤道儀を購入するか迷っているところです。以前その装備で撮影を強行した結果、1分露出にもかかわらず歩留まりが脅威の0割でした(撮影時にこれはダメだと気づいてはいたのですが放置しました。。。)。極望と微動を手に入れたとしても風やたわみへの懸念はぬぐい切れないので、小型赤道儀の購入に舵を切るべきなのかと考えています。そうなった場合は強めのポタ赤が余るので中望遠レンズを手に入れることも視野に入れてもいいかもしれません。小型赤道儀を手に入れた場合、遠征先でM-180Cで眼視をしながら撮影もできるというメリットもあります。 M-180Cに関して眼視で使い倒してから撮影にも使おうと考えています。ドールカーカム式の弱点として周辺部のコマ収差が挙げられますがイメージサークル6mm程度なら実用範囲なので、フォーサーズ程度のカメラで銀河や惑星状星雲を撮影したいと考えています。フラットナーレデューサーを入れたとしてもFが相当暗くなるので、遠征地で気軽に撮るというよりは、ベランダ撮影で露光時間を大量に稼ぐ運用が現実的でしょうか。

新しい機材

大口径屈折に対して憧れを持っています。自分は暗いところに出かけて星を見るというスタイルなので、実用上最大口径かつ世界最高峰の見え味ということでTOA130が欲しいです。TOA130に関しては現時点では撮影をメイン考えていないので購入するとしたらTOA130NSでしょうか。懸念事項は温度順応に時間がかかることです。(重量考えた時点で気軽には持ち出せないという突っ込みはさておき)ちょい見に使うハードルが上がると運用頻度が下がってしまうことを恐れています。かのアルナグラーも「最もよい望遠鏡とは、最もよく使う望遠鏡」と言っていますし*1。撮影だとシビアでしょうけど眼視だとそこまで気にしなくてもいいのでしょうか?3枚玉以上を所有したことがないので情報収集の必要あり。 赤外が良く映るカメラがもう一台欲しいです。一応デジイチを2台持っているのですが、片方は6年前のカメラで星撮りには使い勝手が悪い部分が多々あります。増やすとするならば、ハヤタカメララボでx5あたりでしょうか。もう一つの選択肢として冷却CMOSカメラを導入することも考えられます。ただ自分は撮影地にパソコンを持っていくことに抵抗があります。暗順応を壊してしまうのが嫌といつも言いますが、遠征地でスマホを触ったりしているので面倒くさがりの言い訳です。もし導入するとなると実用的なノパソと大容量バッテリーが必要になるので、結構な出費&腰が重くなるのが懸念事項。 星景用にデジイチをもう一台導入したいです。今後も一生続けていく趣味として、遠征地の雰囲気や星見の雰囲気の記録として写真を残していきたいと考えています。気軽に撮るだけなので高感度が使えてノイズ耐性が高いフルサイズがベターでしょうか。360°カメラという選択肢も。あわよくばそのカメラで直焦も、と考えてしまうのが悪いところです。

まとめ

まずは今ある機材を最大限活用する事。ものとしては小型の赤道儀と実用的なカメラを一台増やすのが優先事項でしょうか。目的と手段がごっちゃにならないように。

*1:有名な文言ですが、これって元文献あるのでしょうか?テレビュージャパンのHPに日本語は乗ってますね

皆既月食

本日(2021/5/26)は皆既月食でした。天気予報を見て、もしかして雲の切れ間があるかもしれない場所へと繰り出しました。かなりギリギリに現地に向かっていたので、欠けてる月が上ってくる様子を車からみることに。現地に着いて急いでカメラを出しましたが、見られたのは部分食のはじめと終わりだけで、皆既月食中の月は見事雲の中という結果でした。用意周到に準備してという形ではなく、車から欠けた大きな月を観るという形になったことでかえって記憶に残った気がしています。この時期の天気に期待していなかったので少しでも見られたことに感謝です。
一応証拠写真を。雲でかけているのか月食でかけているのか怪しいところではありますが、予報とかけている方角が同じなので部分月食判定で。。。

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部分月食時の写真判定

天文イベントについて思ったことを少しだけ。特に何もない日に星を観ることも楽しいですが、流星群や月食、日食といったイベント時にみんなが注目して盛り上がっているというのにも違った楽しみを感じます。自分が楽しんでいるものを誰かに理解してもらったり一緒に楽しんでもらったりするのが嬉しいからでしょうか。天文のアウトリーチ活動に身を入れようとまでは今は考えていませんが、こういったことをきっかけに天文を趣味にする人が増えたらなと思います。

短いですが、今日の記憶が風化してしまう前に投下します。後日書きたいことを思い出したら書き足すかもしれません。

ナナロクのすゝめ

高橋製作所のFC-76Dいかがでしょうか?自分が所持しているのはFC-76DCですが、現行版ではFC-76DCUとなり鏡筒を分割することが可能になっています。 自分が初めて手に入れた鏡筒なのですが、これから天文趣味を始めて眼視も撮影もしたいという方には個人的に非常におすすめしています。これまでに議論され尽くされた話題かもしれませんが自分がおすすめする理由をいくつかの観点から紹介したいと思います。5年使った愛着から贔屓目が入っているので悪しからず。

国内製品か海外製品か

もし初めて望遠鏡を買うなら何かあった時のサポート体制や対応の早さを考えて国内製品の新品を買うことをおすすめします。自分が知っている天文ショップの方々は親切かつ丁寧なサポートをしてくださいますが、メーカーに判断を仰がなければいけない場合も考えると国内のものが安心です。そもそも不良品をつかまされる可能性の国内製品の方が低いので(これも諸説ありますし、確率の問題とも言えます)、国内製品なら安心です。そうなると高橋製作所かVIXENかトミーテックの三択です。眼視だけならVIXENのED、SDシリーズがありますが、撮影時に光路上に飛び出した銀箔による輝星割れが起こるので避けたいところです。撮影だけならトミーテックのBORG72FLがありますが、撮影寄りの鏡筒で眼視には向きませんし色々とパーツを組み合わせるのは初めての方にはハードルが少し高いと思います。そういうのが好きという方はトミーテックの製品は非常に刺さると思います。高橋製作所のFC-76DCUであればどちらも十分な性能を発揮してくれます。ということでFC-76D一択! ...というのもあれなので、気になるであろう点も触れつつもう少し掘り下げます。

金額

一つ目は国内鏡筒に絞った時点でしょうがないのですが覚悟すべきは金額です。FC-76Dを撮影まで見越して揃える場合は25万ほどかかります。内訳は本体が145,200円、鏡筒バンド(80QS鏡筒バンド)が14,300円、76Dレデューサーが49,500円、カメラ回転装置(SKY90)が21,450円、カメラマウント(DX-60W)が12,100円です。自分は少しずつ揃えていったこともあってあまり高くついたようには感じませんが、初めて買うには躊躇しますね。ですが眼視も撮影もこれですべてと考えると安...くはないですね。怪しいものや不安が残るものを買うよりは、多少値が張っても安心して眼視も撮影もできる高性能な鏡筒を手に入れるのが良いというのが自分の考えです。とにかく安さを優先したい場合はEVOSTAR72、安さとスペックのバランスを見る場合はSharpstarの76EDPHなどが考えられるのでしょうか。海外製品は自分の周りにユーザーがいないので実際に覗き比べたり撮影画像を比較したことがなく、正確なことが言えません。 天文趣味にも色々な楽しみ方がありますが、撮影や眼視を色々やっていきたいとなるとどこまでもお金の問題はついて回ります。もちろん他にも赤道儀もカメラも必要になってきてしまうのですが、学生でも頑張れば不可能ではない値段ではないでしょうか。社会人であれば趣味としてやっていこうと覚悟を決めれば可能な範囲だと思います。

大きな声では言えませんが、もし天文趣味は肌に合わないとなった場合は売ることも可能です。執筆時点でリセールバリューが最も高い製品は高橋製作所の製品です。

眼視

初めての方は写真で見るような繊細なものを想像している場合がっかりする事が多いです。月のクレータ、火星のなんとなくの模様、木星の縞、土星カッシーニの間隙なら見えます。もう少しマニアックに行くと主要な2重星は見えます。たまに話題になるシリウスBは自分が確認した範囲では無理でした(口径考えると仕方がない)。都内からでもオリオン星雲のぼやっとした部分やアンドロメダ大星雲のぼやっとした感じはわかります。製品として気になる点はただ一つ、ドローチューブ繰り出し量の短さです。直視だけならば問題ないのですが、天頂プリズム・ミラーを変えながら使ったりピント位置の大きく異なるアイピースを使ったりする際に微妙に繰り出し量が足りないor多いという問題に直面します。接眼部の大きさ故仕方ないのですが、実際に使っているとリングを抜いたり追加したりするのはかなり煩わしいです。初めての方はアイピースもアクセサリーも種類がないだろうからそこまで気にならないかもしれません。気になる方はお高くなりますがFC-76DFを サイズとしてみると口径76mmはちょうど良く気軽に持ち出せるサイズの鏡筒として本当におすすめです。

もし同口径の2枚玉でもっとよく見えるよという鏡筒をご存じの方は是非教えていただきたいです!自分としてはFOA60とサイドバイサイドで見比べていないので、そのうち見比べたいと思っています。

撮影

作例というほど立派なものは撮影できていないので主観的な感想だけ記します。APS-Cであれば周辺光量落ちも少なくあまり気にしないのであればフラット補正なしでも使えなくはありません。色収差は多少出るのでソフトウェアで補正するのがいいと思います。フルサイズだと周辺では多少星像の崩れが見られるのでそれなりの光量落ちがあるのでフラット補正が必要です。センサーサイズ大きくすると情報量はリッチになると思いますが、色々と気にしないといけないことが増えるのでAPS-Cでの使用に留めておくのが吉だと考えます。

その他の推しポイント

FC-76DCUは分割鏡筒なので海外に持っていきやすいです。色々機材を持っている方のサブとしてもオススメです。また、DCUは対物レンズを60CBに換装することも可能なのでナナロクで眼視や撮影を楽しんでから焦点距離を変えるという使い方も見越して非常に魅力的だと思います。


色々と書いてきましたがナナロクの輪を広げたいという思いでこの記事を書いています。本当に悪いことは言わないので初めての人は是非ナナロクを検討してみてください。 もちろん各人のニーズにあったより良い鏡筒もあると思うので、ひとつの情報を盲目的に信じずに色々と調べてみてくださいね。 ここまで書いておいてなんですが、初めて鏡筒を買う際の一番のおすすめはネットや家電量販店ではなく、望遠鏡専門店でプロに相談することだと思います。。。

後日しれっと書き足したり直したりした場合は悪しからず。

これまでの経緯

自分の天文遍歴を見つめなおしたいと思います。自分は人の天文遍歴や機材について知るのが好きだったりするのですが、普通は興味ないと思います。 この記事ももしかしたら消すかも。

はじまり

高校の時は友人の誘いからなんとなく天文を始め、ゆるふわスタイルで星見をしていました。なんとなく始めた上に、高校生ということで移動手段やお金など様々な制約があったことから、機材や星の知識もなくぼーっと星を眺める程度でした。屋上にある部室で部員同士グダグダしていた記憶が大部分を占める中、高校の屋上で見た金環日食や合宿所で行った流星観測の記憶が少ないながらも強烈に自分の心に残っています。

大学に入ってから

高校の時もやっていたから程度の軽い気持ちから天文を続けることにしました。制約から解放されたこともあり、ここから沼の深みにはまっていきます。新月期には授業が終わったら車を借りて星を見に行き、翌日の1限から授業に出るなどという若さと体力と根気にものを言わせた星見をしていました。1限チャレンジなどと呼んでそういった状況も楽しんでいたことを覚えています。

機材に関してもこのあたりから まずカメラを買ったことをきっかけに天体撮影を始めます。初めて天の川が写った時の感動は今でも忘れられません。千葉の海沿いで撮影した時に海風でカメラが塩漬けになったことも。 天文ショップでたまたま出会ったEM-1を手に入れたことから直焦点撮影にものめり込んでいくことになります。カメラ買って赤道儀買ってもうお金がないと言いながら無理やり資金繰りして望遠鏡も買いました。友人らと星を見に行くことが楽しく、撮れる写真の質は気にしていなかったのでひどい写真を量産していました。(4年間補正レンズなしで撮っていました。。。)

その後

最近は補正レンズも買って、眼視用の鏡筒も買って、架台も強くして、と色々と機材が充実してきて、自分の中でも納得がいくような写真も撮れるようになってきました。懸念事項は友人らとわいわい星見に行ける機会も減ってきたことです。歳を重ねていくと色々なものに縛られていくから仕方がないですね。これまでの記憶は友人らと楽しんだ星見ばかりなので、ひとりで楽しむ星見スタイルも模索しつつこの趣味を長く楽しんでいけたらと思っています。